本日の講義では、 生物の進化の流れについて時系列に沿って大まかに追い、 その進化の歴史における重大な転換点を挙げ、 それに対する疑問点の提示及び考察を行いました。 講義では特にカンブリア紀について大々的に取り上げ、 その期間における生物種の爆発的増加の要因を探りました。 これはカンブリア紀の大爆発と呼ばれ、 古生代カンブリア紀に突如として、現存する動物界の38の門が出 そろった現象として知られます。イギリスの研究者アンドリュー・ パーカーの著書『眼の誕生』によると、三葉虫をはじめとして、 生物が初めて視覚を獲得したことに起因しているとされています。 同氏はこれを「光スイッチ説」として提唱し、 これら視覚器官の発達は捕食者有利の状況下での淘汰圧の高揚、 付随して被捕食者の体表面組織の硬化をもたらしたとしました。 この捕食者・被捕食者間における競争激化の結果、 多様な生物種が誕生したとされています。 今日では視覚とは生存に直結するものであり、 数多くの動物にとっては逃避及び捕食行動に入るためのトリガーと して、敵の感知・捕捉を一手に担っています。 これに関して私が異論をはさむ余地は無いのですが、そもそも36 億年前の生命誕生から5億年前のカンブリア紀まで地球上に視覚と いう概念が存在しなかったことを考えると、その30億年余りがい かに生ぬるい生存競争であったかが容易に想像できます。 間違いなくカンブリア紀は生物学史における最大の転換点であり、 「眼」を獲得した海洋生物はその後陸上に進出し、 大いなる進化を遂げることとなりました。30億年かけて視覚を得 た祖先が、 その後5億年弱でどれほどの発達を遂げたかは今日の我々を見れば 明白であり、 視覚という概念が生物のあり方をどれほど変えたかは想像に難くな いでしょう。